アラサーから始めるロードバイク

運動音痴、運動嫌いの俺がロードバイクに乗り始めた記録です。

自転車漫画を読もう 第二回「弱虫ペダル」

こんにちは! ロードバイク初心者のyuntaです。


今回は自分の好きな自転車漫画について紹介したいと思います。
第二回は「弱虫ペダル」です。


昨今のロードバイクブームの火付け役であり、多くの人にロードバイクやロードレースというものを認知させたであろう大人気漫画です。
かくいう俺もこの漫画でロードバイクのことを知り、興味を持っていたことが購入の一因となりました。
もはや説明する必要がないくらい有名な作品ではありますが、サクッと紹介したいと思います。


ストーリーとしてはオタク少年の小野田坂道くんが、同級生の今泉俊輔くんにいきなり自転車勝負を挑まれ、自転車レースの世界に触れるところから始まります。
そしてロードレースの世界に足を踏み入れた小野田くんが、
その天賦の才で経験者たちをボコボコにしていく
という漫画です。
簡単に言うと主人公最強系の無双漫画です。
ド素人の小野田くんのあまりの無双ぶりにツッコミが入ることもある作品ですが、小野田くんの強さにはそこそこ理由があります。(もちろん凄まじい天賦の才の持ち主ではありますが)


まず小野田くんはオタク趣味のために千葉県から秋葉原までの往復90kmを毎週、ママチャリで通っていました。
小学生の頃から。
それにママチャリはオカンが「遠出しないように」と回しても速度が出ないようにギアに細工が施されたものでした。
つまり彼は知らず知らずのうちに、小学生の頃からロードレーサーとなるためのトレーニングをこなして脚を鍛えていたのです。
何故それが出来たのか?
それが次の理由にもつながります。


秋葉原へ毎週足しげく通っていたのは、趣味であるオタクグッズを買うお金を浮かすため(僅かな電車賃のために)……。
その目的のために、普通は苦行――というか小学生には無理なレベルの距離を自転車で走れているのです。
それも自主的に、楽しんでです。
このメンタリティが小野田くんの強さの秘訣です。
なにしろ劇中で、彼が苦しんでいたり、何かに耐えている場面というのはほとんどありません。タフな局面に出くわして驚嘆したり責任を感じたりということはあっても、怒ったり絶望したりということはなかったように思います。
彼は常に楽しんでいます。非常にポジティブに自転車競技に向き合っているのです。彼は物事から楽しさしか見出すことが出来ません。それがレース中に鼻歌混じりで笑顔で登坂する、という彼の特徴にも現れています。
まさにメンタルお化けです。
自分も自転車に乗っていて思うのは、脚力ももちろん重要ですが、それと同じくらい精神で乗るものだということです。
その点において小野田くんのメンタリティは過酷なロードレースにおいて唯一無二の武器となります。
漫画のタイトルに「弱虫」と入っていることに加え、眼鏡でオタクな外見の小野田くんを見ると、初見は彼が弱虫なのかなと思うでしょうが、この漫画の主人公に弱虫要素は一切ありません。
(多分、弱虫要素は今泉くんが一手に引き受けていると思います)


さらにメンタル面で優れているのは、彼の吸収の良さです。
彼は自転車競技の未経験者でまっさらな状態であることに加え、性格が非常に素直で聞き分けがよいです。
そして運よく良き指導者(先輩、同級生)に恵まれます。(監督の存在はなかったことになってるけど)
確かに経験が皆無なことで不利な状況に陥ることもありますが、不屈の精神と吸収の良さですぐにその問題を解決します。(レース前に教えとけよ!という場面も多いですが、そこはまぁ漫画的な都合ということで)
そして、それらの障害を乗り越え、恐ろしいスピードで成長するわけです。


小学生から地道に鍛え上げた脚力、天性の不屈のメンタリティ、スポンジ並みの吸収力、指導環境の良さ。
これらが小野田くんを最強たらしめている要素でしょう。


しかしこの漫画の魅力は、この最強過ぎる初心者である小野田くん以外のところにあります。
(では何故長々と解説したのか……)


この漫画はサブキャラクターたちの魅力・人気で成り立っているといっても過言ではないでしょう。
特にライバル校の箱根学園のキャラ人気は凄まじいものがあり、特に女性人気が強いようです。
この漫画では各キャラの魅力を引き出すため、異様に回想やら後付けやらがあります。レース中は基本的に回想しつつ走っている感じです。
中にはやり過ぎて違和感があったり、カラ回ったりすることもありますが、キャラの個性付けは上手い漫画だと思います。
なのでサブキャラクター同士が戦うレースシーンがほとんどでも楽しいのだと思います。
というか最後には結局小野田くんが勝つので、勝敗の分からないサブキャラ同士の対決の方が面白いのでしょう。
(自分は特に1年目IHの2日目、御堂筋VS新開のバトルが好きです)


しかして、この漫画はロードレースを題材にしているわけですが、ロードレースという競技の魅力はさほど内包していないと思います。
というのもチーム戦の有利不利を表現はしていますが、総合タイムを競っているわけではなかったりするので、結局は個人の能力の勝負になりがちだからです。
チーム戦ということを強調してはいるのですが、その大部分は精神的な部分をアピールしており、逃げ集団とメイン集団の駆け引きとかはありません。
その点でいうと御堂筋翔くんの率いる、京都伏見というチームは唯一、ロードレース的な戦い方をしていると思います。
漫画内では極悪非情で冷徹なチーム運営と捉えられていますが、もっとも現実のロードレースに近い考え方をしており、そこが俺は好きです。
御堂筋くんがチームメイトへのリスペクトをもってさえいれば、なんら非難される覚えのない戦い方なんですよね。


というわけで俺の好きなキャラは勝利のみを求める純粋な奇人御堂筋翔くんです。
彼の縦横無尽な暴れぶりはキャッチ―で、彼から弱虫ペダルという漫画に興味を持った方もいるのではないでしょうか?
他には御堂筋くんの弟子で、ロードレース界の解体屋ジョネスこと筋肉ソムリエの岸神小鞠くんが好きです。
小鞠くんはヘルメットの穴にサングラスを差しているので「あぁ、アイウェアってそこに差せばいいのか!」と気付かせてくれた恩人です。
あと俺がTREKに乗っているので、同じTREK乗りの金城先輩も結構いいですね。
こういうキャラの乗っているバイクに愛着を感じたりするのも、自転車漫画の良いところです。


またキャラの魅力の他に、この漫画のセールスポイントは「熱い」ところです。
【友情・努力・勝利】というジャンプ三大原則を見事に満たしていると思います。(掲載誌はチャンピオンだけど)
特にゴール前スプリントなどの場面では、渡辺先生の荒々しく迫力のある絵が場面を盛り上げてくれます。
1年目IH3日目の、小野田VS真波は鬼気迫る素晴らしい絵でした。(アニメだとそこまで表現されてなくて残念だった記憶)
と……この文章を書いていて思ったのですが、弱虫ペダルのメイン3校って、それぞれジャンプ三大原則に準じている気がします。
6枚のジャージで戦うことに拘り思いを繋ぐ戦い方の総北高校――友情
王者であることの誇りを胸に絶え間ない鍛錬を積み重ねる箱根学園――努力
何よりも勝利のみを求めて限界まで削ぎ落す京都伏見――勝利

って感じで。
まぁ意識しているわけじゃないんでしょうけど、3校のそれぞれの特色が出ていて面白いと思いました。


今や数々のメディアミックスを果たし、ロードバイクの魅力を幅広い客層に届けた「弱虫ペダル」。
「キャラの魅力」「王道な熱さ」を持った良い少年漫画だと思います。