アラサーから始めるロードバイク

運動音痴、運動嫌いの俺がロードバイクに乗り始めた記録です。

自転車漫画を読もう 第三回「はやめブラストギア」

こんにちは! ロードバイク初心者のyuntaです。


今回は自分の好きな自転車漫画について紹介したいと思います。
第三回は「はやめブラストギア」です。


この漫画は2017年9月現在で既刊3巻の比較的若い漫画です。
掲載誌は『ドリフターズ』などで有名なヤングキングアワーズ。作者は少年ジャンプで連載したこともある竹山祐右先生です。


さて、この作品の主人公は女子高生ロード乗りの「円城寺はやめ」ちゃんです。




昨今のロードバイクブームで女性サイクリストも増えています。
そんな時代にぴったりの主人公ですね。
(ロードバイクは高価なのもあり女子高生で乗っている人は少ないと思いますが……)
そんな円城寺はやめちゃんは愛車のビアンキに乗ってヒルクライム(峠登り)にやってきました。
峠を登るのは大変ですが、登り切った時の達成感はひとしおですし、雄大な自然を堪能できるので楽しいですよね♪






さぁ、はやめちゃんが今回訪れた峠はこちら!






















あるところにあり――
そこに待ち受けていたのは裏ロード界!


繰り広げられるは、己のロードの部品(パーツ)を賭けて行う魂のレースッ!

「DEATH STRIDE RACE<デストライド>」であったッッ!!


者はに従い、者のロードからパーツ奪うことが出来るッ!
パーツを奪われ自走不能になった者には、者のチームロゴ入りの輪行袋<ルーザーズバッグ>が叩きつけられる!
者の烙印を背負わされ、者チームの宣伝までさせられる屈辱のアイテムだッッ!!




何も知らずに迷い込んだ円城寺はやめ
しかしロードバイクに跨ってこの峠に来たからには、知らなかったではすまされない。
峠<ヒル>での無知は罪<クライム>!!


こうして円城寺はやめは、風張峠を治める死神王との<デストライド>に挑むことになる――









はい。
そういう漫画です。




レース内容もショルダータックルで相手を吹っ飛ばし、吹っ飛ばされた方は咄嗟にビンディングを外し壁を走って復帰するとかは当たり前。
敵となる王<キング>たちは、後輪で小石を跳ねて攻撃する<デス・バレット>や、髪の毛で相手の顔面を攻撃する<ツインテール・ウィップ>などの必殺技を駆使してきます。
はやめちゃんはそんな王たちと戦い、勝利し、絆を深め、やがて失踪した父に繋がる謎のパーツ<オーメスト・グランデ>と出会います。
父のことを知る手がかりとなる<オーメスト・グランデ>のパーツを集めるため、さらに各地を治める王<キング>たちとの<デストライド>に挑んでいく……。
というのがストーリーのおおまかな流れになります。


お判りいただけたと思いますが、ロードバイク漫画の常識に囚われないぶっ飛んだ設定が魅力の漫画です。
真面目にロードバイクのレースを読みたい人は読んじゃいけません。
でもロードバイクと漫画が好きな人だったら、間違いなく薦められる作品だと思います。
「んなアホなwww」と言ってしまうぶっ飛んだ世界観とレース内容なのに、どこかロードバイクのリアリティを感じさせるこだわりがあります。
空想と現実の、ギリギリ空想側にはみ出してるラインを攻めている感じです。
そこには作者のロードバイク愛が込められている気がします。


また自転車漫画で疎かになりがちなパーツに注目しているのも良いところです。
デストライドの性質上パーツの奪い合いということになり、また作中のキーアイテムとなるのも<オーメスト・グランデ>という謎パーツなので、ロードのパーツにたびたび視点が置かれています。
そこがロードバイクの魅力の一つであるパーツ選びや愛車のオリジナリティに繋がり、ロード乗りなら共感するポイントでもあると思います。


話の展開自体は王道少年漫画的な感じで、すっきりとしていて読みやすいと思います。
はやめちゃんは戦いの中で成長する天才タイプなので『才能・友情・勝利』って感じです。
王<キング>には「敵を攻撃する飛び道具タイプ」と「走りに専念するタイプ」がいますが(この説明の時点であたまがおかしい)白虎王であるはやめちゃんは後者です。
様々な攻撃をしてくる敵に対し、その場で対応して凌いでいく姿は王道主人公ですね。空条承太郎とかそっち系です。
あとこの漫画、ネットでバズったネタとかを挟んでくるので、そういうのに詳しいとなお楽しめると思います。


そして、この漫画の大きな強みはキャラでしょう。
まず主人公であるはやめちゃんは、可愛くてとてもいい娘です。作中でやたら人を惹きつけるのも納得がいく性格をしています。
母親と死別し父親は汚名を背負い失踪している辛い状況ですが、自転車を純粋に楽しんでいる姿はつい応援したくなります。(デストライド中は「今一番ヤベぇ奴」と評されていますが)
そして仲間となる王たちもバランスが取れていて魅力的です。(完全に保護者<お父さん>と化した死神、〇〇〇ーのオタサーの姫、イケメン変態インストラクターなど)
しかし俺が一番好きなのは2巻に登場する「達磨王・藤岡」です。
このキャラが自転車に乗り始めた理由とか、楽しさに目覚めて努力していく話が凄く好きです。こういうどうでもいいキッカケでもいいんだよな~とか思ったり『運動には一生縁がないと思っていた』とか共感します。
そして、はやめVS藤岡のバトル自体も起伏在りテンポ良しで、今のところベストバウトなんじゃないかと思っています。
(他には、はやめちゃんが悪逆非道な王に対して初めて自分からデストライドを挑むシーンや、忍者と戦うバトルも好きですね)


余談ですが、この漫画の単行本のように、1巻で1キャラずつ描かれているタイプの表紙が俺は凄く好きなんですよね。(ジャンプの封神演義の影響かな?)
特にこの漫画の場合、キャラと愛車が一緒に描かれているので、凄く映えていい表紙になっています。


あとですね、この漫画に出てくる<オーメスト・グランデ>というブランドなんですが、実在するんです。(というか実在するブランドが協力している)
実際のオーメスト・グランデは漫画の中のように未知の素材で出来ていて異常に軽いとかはないですが、ジャージなどのウェアから何とフレーム本体まで、そして輪行袋<ルーザーズバッグ>まで売っています。
特に、はやめちゃんも着ているオーメスト・グランデのジャージがめっちゃカッコイイです。
チェレステカラーなのでビアンキのチェレステに乗っている人はマストバイですよね。
(※チェレステ:イタリア語で「天空」を意味する。ビアンキを象徴するカラーで有名)


最後に。
これまでに自分が紹介した自転車漫画を一言で評すると――
「ろんぐらいだぁす!」は、ゆるふわ系矯正ギプス漫画。
「弱虫ペダル」は王道少年漫画。
そして「はやめブラストギア」は……


「コロコロコミック的漫画」と言えるでしょう。


コロコロコミックってホビー漫画がたくさん載ってるじゃないですか?
俺の世代だと、ミニ四駆やらハイパーヨーヨーやらビーダマンやら……。
子ども向けのホビーをテーマにして、おもちゃ会社が秘密結社めいた組織力を持っていたり、世界を巻き込むような影響力を持った荒唐無稽な世界観で、時にはホビーが世界を救ったりする展開までありました。
「はやめブラストギア」はまさにアレなんですよね。
ロードバイクというホビーをテーマにしたコロコロコミックです。
ホビーの内容が基本的に高価なロードバイクなので、オトナ向けではありますが、これ掲載誌がコロコロコミックでも全然違和感ありませんよ。いや言い過ぎか? でもコロコロアニキなら……。
ちなみに俺の予想だと全ての<オーメスト・グランデ>を集めて完成車を組んだ時、世界は滅びます。


というわけで、これからどんどん盛り上がっていくであろう「はやめブラストギア」の紹介でした。
ぶっ飛んだ世界観とレースに中枢神経をやられなければ、キャラ・ストーリー共に楽しめる作品です! むしろ中枢神経をぶっ壊して読みましょう!
いつかアニメ化とかして欲しいですね~。


はやめブラストギア(1) (ヤングキングコミックス)
はやめブラストギア(1) (ヤングキングコミックス)
少年画報社
2016-11-30
Kindle本

三浦半島一周 150kmライド

こんにちは! ロードバイク初心者のyuntaです。


先週末は台風でしたね。
楽しみにしていたライドがおじゃんになってヘコんでいましたが……。
その鬱憤を晴らすため、今日は三浦半島一周に挑戦してみました!


ツーリングとしてはメジャーな三浦半島一周。
多くのサイクリストの先輩がネット上にその情報を落としてくれています。
さて、どのコースで走るか……。


そういえば三浦半島ライドは「ろんぐらいだぁす!」でも取り上げられていました。
ということはアニメの公式サイトにルートデータがあるではないですか。
さっそくゲットしました。
しかし、このデータは浦賀から江ノ島までのルートしかありません。
浦賀まで輪行というのも考えましたが、せっかくなのできっちり三浦半島を一周したい!
ということで自宅から浦賀までは自分でルートを設定しておきました。


さて今回のライド。
まずスタートが最高でした。
なにせ寝坊しなかったですからね。


時間に十分な余裕をもってスタートすることが出来ました。
自宅からみなとみらいまでは以前に走ったことがあるので


特に問題なく走行できました。
今までのライドの経験が活かされていく感じが良いですね。
どんどん組み合わせて自由に走れるようになれると便利そうです。
しかし、みなとみらいは自転車専用レーンが用意されていたり素晴らしいのですが、路駐によってほとんど意味がないのが悲しいですね。
それに路駐の隙間から、歩行者がポコポコ横断のために飛び出してくるという、なかなかの無法地帯ぶり。
朝のみなとみらい、恐るべし。


山下公園でしばし休憩してから出発です。
さて、ここで今回のライドで唯一の懸念材料に遭遇します。
みなとみらいから三浦半島に入っていくルートですが、東京湾岸道路が海岸線に沿っているのでこれをチョイスしました。
しかしグーグルストリートビューで偵察した結果、この道路は大型車両がたくさん通っている感じの道路なんですね。
なので自転車で走るのは危ないかな~と思っていました。


いざ行ってみると、確かに大型車が通行はしていますが、平日の午前中ということもありそこまで多くはありません。
出来るだけ巡航速度を出して一気に切り抜けます。
と……気付いたら、いつの間にか設定したルートからズレて、内陸よりの国道16号線に入っていました。
まぁこっちの道の方が安全そうだしいいか。ということで、そのまま横須賀を目指します。


途中でトイレに行きたくなったのでコンビニに行きました。
尿意が高まるとペダルを漕いでるどころじゃなくなるので、トイレは本当に計画性を持って確保しなければいけませんね。
ついでにコンビニでおにぎりを一個食します。
俺の中のメソッドとして「1時間or20kmごとに一回の休憩・補給」がベストだと思っているので、ちょうどよい感じの休憩になりました。
今回のライドはこまめな休憩と補給に成功したことが、大きな収穫の一つですね。


さて横須賀です。
一度だけ猿島に来たことがあったので、遠くに見える島を見て懐かしみました。
ここには「よこすか海岸通り」という道があって、如何にもオーシャンビューが観れそうな名前です。
実際に海沿いを走ってはいますが、車道と海のあいだに防波堤や店舗があって、実はそれほど海を見ながら走れるわけではありませんでした。
観音崎を回って一気に浦賀へ抜けます。


無事に前半戦は終了です。
ここからは自分の作った適当なルートではないので安心感があります。


そういえば自分は海岸線を走るのが好きなようです。
山(といってもただの住宅街)育ちなので、海に免疫がないためでしょうか。
鎌倉ライドの時に走ってから、海岸線ライドを魅力的に感じています。


そんな俺にとって今回のライドで一番の目玉がここです。




浦賀市街地を抜けると、完全に海の隣を走れる直線が待っているのです。


はやる気持ちを抑えつつ、ペダルを漕ぐスピードが速くなります。
そして、カーブを曲がると、そこには広大な海が――
うおおおお! きたあああ!













「通行止めです。」




は?(憤死)




「右に迂回してください。」




右を向くと、




そこには斜度10%オーバーであろう激坂が。




は?(弐撃決殺)




ということで運悪く工事中だったので海を目の前にして、山登りを開始します。
まぁ、1kmくらいで海岸線に戻れたのでいいんですけど。
ただテンションが落ちたのと、激坂で足が削れて、海岸線はノロノロ走りました。


しばらく海岸線を走っていったあと、ちょっと内陸部を走ります。
そこで目の前にとんでもない坂が現れました。
斜度も結構あるし、大きなカーブが弧を描いているので、視覚的プレッシャーが凄かったです。
若い二人組ロード乗りはガシガシ登っていましたが、御年輩のロード乗りの方が頑張ってゆっくり登っていました。
俺はちょうどその中間くらいのスピードで何とか登りました。
ん? そうか、これが「ろんぐらいだぁす!」ファンの間で有名な噂の「亜美ちゃん坂」か……。



亜美ちゃん坂登ってみた


ネットで拾った動画を拝借。
映像で見ると今いちキツさが伝わらないけど、結構えぐかったです。
ここ劇中ではミニベロ(折り畳み自転車)で登ってたけど、亜美ちゃん凄くね……?
登頂したところでヤマザキショップを発見。サイクルラック完備。
ちょうど小腹も空きかけていたので、ここでも休憩です。
やはりサイクルラックのあるお店はありがたいですね。


その後、有名な風車の前にも視覚的にエグイ坂がありましたが、ギアを軽くしてセコセコ登りました。



毘沙門の坂とかいうラスボス級の名前。
坂のキツさは実際の斜度より、遠くから見た時のインパクトで決まる気がする……。


今回は特にどこでお昼ご飯を食べようとか決めていなかったので、ヤマザキショップで休憩している時に調べました。
どうやら城ケ島にサイクリスト御用達の海鮮のお店があるようです。
三浦半島に来たのだからマグロを食べたいと思っていたので、ちょうどよかったです。
城ケ島への大きな橋は車両有料ですが、自転車はタダで通れました。

城ケ島の「しぶき亭」さんです。
色々とサービス品をつけてくれたのでありがたかったです。
マグロ丼も美味しかったです。


その後はやや内陸部を通っていきます。
少しアップダウンがありましたが、汗を掻き掻きなんとかクリアしていきます。
本当に曇りで涼しくて良かったかもなぁ、と思いました。


次は葉山・逗子の別荘地帯を抜けていきます。
ここら辺は車通りも少なくて走りやすかったですね。


逗子から鎌倉に行く前に休憩しようかな~と思っていると、ちょうどコンビニが。
四つ角の向こうなのでパスしようかと思いましたが、駐車場にサイクルラックがあるのを発見したので寄ることにしました。
日本社会から疎外されているロード乗りにとって、自転車ウェルカムな空気を出されるとついホイホイとついて行ってしまいます。


ここで休憩したらあとは鎌倉から江ノ島まで一気に走ります。
以前の鎌倉ライド


で通ったことがあるので楽勝!




…………。





な、なんだこの向かい風はあああああ!?




強烈な潮風が対面から吹いてきて、全然前に進みません。
前ハン握って姿勢を低くして、何とか突き進むしかありません。
そして相変わらず、ここら辺から車の渋滞が始まっています。
たまに向かい風が横風になって、思いっきり身体が持っていかれるので、車側によろけないように、かなり神経を使いました。
最後のひと踏ん張りでエライ体力を奪われましたが、なんとか江ノ島に辿りつきます。
これにて三浦半島一周達成です!


帰りは境川CRを使って黄金パターンで帰宅しました。もう手慣れたもんです。
今回のライドでは何度もロード乗りの人にビュンビュン抜かされまくりましたが、自分のペースを保って走っていました。
しかし家の近くで速そうなロード乗りに抜かされたので、しばらくついて行ってみることにしました。もう体力の残りを心配することがないですからね。
ほぼ全力で漕いで、なんとか前の人と同じくらいのペースでした。
その人は直線で大体、40km後半くらいで巡航しているようです。このくらいのスピードで普通に巡航できたら、色々と行けるところが増えるなぁ。
でも家の近くで別れるまで、なんとか同じスピードは保てたので、やればできるのかもしれません。何十kmも持続するのは無理かと思いますが……。
目の前にペースの基準となる人が走っていると、一人で走っている時よりスピードが出しやすいですね。


さて、家に帰ってサイコンを見ると走行距離は150kmちょうどを示していました。
なんか気付かないうちに最高記録を更新していました。
そんなに距離が長いルートじゃないと思っていたのですが、なんやかんやで結構走ったみたいです。
今回は箱根の時と違って、体調不良もなかったし、最後まで気持ちよく走れたので成長かなと思います。
恐らく今回の勝因は「曇天で涼しかった」「早起き出来た」「休憩をこまめに取れた」あたりかなと思います。
やはりロングライドは計画性が重要だ。


三浦半島一周を達成したので、次はどうしようかと考えています。
荒川サイクリングロードを走ってみたいというのもあるし、峠シリーズも新しい場所を登ってみようかなと模索中です。
何しろモタモタしてたら冬になってオフシーズンになってしまう……。うーむ。

自転車漫画を読もう 第二回「弱虫ペダル」

こんにちは! ロードバイク初心者のyuntaです。


今回は自分の好きな自転車漫画について紹介したいと思います。
第二回は「弱虫ペダル」です。


昨今のロードバイクブームの火付け役であり、多くの人にロードバイクやロードレースというものを認知させたであろう大人気漫画です。
かくいう俺もこの漫画でロードバイクのことを知り、興味を持っていたことが購入の一因となりました。
もはや説明する必要がないくらい有名な作品ではありますが、サクッと紹介したいと思います。


ストーリーとしてはオタク少年の小野田坂道くんが、同級生の今泉俊輔くんにいきなり自転車勝負を挑まれ、自転車レースの世界に触れるところから始まります。
そしてロードレースの世界に足を踏み入れた小野田くんが、
その天賦の才で経験者たちをボコボコにしていく
という漫画です。
簡単に言うと主人公最強系の無双漫画です。
ド素人の小野田くんのあまりの無双ぶりにツッコミが入ることもある作品ですが、小野田くんの強さにはそこそこ理由があります。(もちろん凄まじい天賦の才の持ち主ではありますが)


まず小野田くんはオタク趣味のために千葉県から秋葉原までの往復90kmを毎週、ママチャリで通っていました。
小学生の頃から。
それにママチャリはオカンが「遠出しないように」と回しても速度が出ないようにギアに細工が施されたものでした。
つまり彼は知らず知らずのうちに、小学生の頃からロードレーサーとなるためのトレーニングをこなして脚を鍛えていたのです。
何故それが出来たのか?
それが次の理由にもつながります。


秋葉原へ毎週足しげく通っていたのは、趣味であるオタクグッズを買うお金を浮かすため(僅かな電車賃のために)……。
その目的のために、普通は苦行――というか小学生には無理なレベルの距離を自転車で走れているのです。
それも自主的に、楽しんでです。
このメンタリティが小野田くんの強さの秘訣です。
なにしろ劇中で、彼が苦しんでいたり、何かに耐えている場面というのはほとんどありません。タフな局面に出くわして驚嘆したり責任を感じたりということはあっても、怒ったり絶望したりということはなかったように思います。
彼は常に楽しんでいます。非常にポジティブに自転車競技に向き合っているのです。彼は物事から楽しさしか見出すことが出来ません。それがレース中に鼻歌混じりで笑顔で登坂する、という彼の特徴にも現れています。
まさにメンタルお化けです。
自分も自転車に乗っていて思うのは、脚力ももちろん重要ですが、それと同じくらい精神で乗るものだということです。
その点において小野田くんのメンタリティは過酷なロードレースにおいて唯一無二の武器となります。
漫画のタイトルに「弱虫」と入っていることに加え、眼鏡でオタクな外見の小野田くんを見ると、初見は彼が弱虫なのかなと思うでしょうが、この漫画の主人公に弱虫要素は一切ありません。
(多分、弱虫要素は今泉くんが一手に引き受けていると思います)


さらにメンタル面で優れているのは、彼の吸収の良さです。
彼は自転車競技の未経験者でまっさらな状態であることに加え、性格が非常に素直で聞き分けがよいです。
そして運よく良き指導者(先輩、同級生)に恵まれます。(監督の存在はなかったことになってるけど)
確かに経験が皆無なことで不利な状況に陥ることもありますが、不屈の精神と吸収の良さですぐにその問題を解決します。(レース前に教えとけよ!という場面も多いですが、そこはまぁ漫画的な都合ということで)
そして、それらの障害を乗り越え、恐ろしいスピードで成長するわけです。


小学生から地道に鍛え上げた脚力、天性の不屈のメンタリティ、スポンジ並みの吸収力、指導環境の良さ。
これらが小野田くんを最強たらしめている要素でしょう。


しかしこの漫画の魅力は、この最強過ぎる初心者である小野田くん以外のところにあります。
(では何故長々と解説したのか……)


この漫画はサブキャラクターたちの魅力・人気で成り立っているといっても過言ではないでしょう。
特にライバル校の箱根学園のキャラ人気は凄まじいものがあり、特に女性人気が強いようです。
この漫画では各キャラの魅力を引き出すため、異様に回想やら後付けやらがあります。レース中は基本的に回想しつつ走っている感じです。
中にはやり過ぎて違和感があったり、カラ回ったりすることもありますが、キャラの個性付けは上手い漫画だと思います。
なのでサブキャラクター同士が戦うレースシーンがほとんどでも楽しいのだと思います。
というか最後には結局小野田くんが勝つので、勝敗の分からないサブキャラ同士の対決の方が面白いのでしょう。
(自分は特に1年目IHの2日目、御堂筋VS新開のバトルが好きです)


しかして、この漫画はロードレースを題材にしているわけですが、ロードレースという競技の魅力はさほど内包していないと思います。
というのもチーム戦の有利不利を表現はしていますが、総合タイムを競っているわけではなかったりするので、結局は個人の能力の勝負になりがちだからです。
チーム戦ということを強調してはいるのですが、その大部分は精神的な部分をアピールしており、逃げ集団とメイン集団の駆け引きとかはありません。
その点でいうと御堂筋翔くんの率いる、京都伏見というチームは唯一、ロードレース的な戦い方をしていると思います。
漫画内では極悪非情で冷徹なチーム運営と捉えられていますが、もっとも現実のロードレースに近い考え方をしており、そこが俺は好きです。
御堂筋くんがチームメイトへのリスペクトをもってさえいれば、なんら非難される覚えのない戦い方なんですよね。


というわけで俺の好きなキャラは勝利のみを求める純粋な奇人御堂筋翔くんです。
彼の縦横無尽な暴れぶりはキャッチ―で、彼から弱虫ペダルという漫画に興味を持った方もいるのではないでしょうか?
他には御堂筋くんの弟子で、ロードレース界の解体屋ジョネスこと筋肉ソムリエの岸神小鞠くんが好きです。
小鞠くんはヘルメットの穴にサングラスを差しているので「あぁ、アイウェアってそこに差せばいいのか!」と気付かせてくれた恩人です。
あと俺がTREKに乗っているので、同じTREK乗りの金城先輩も結構いいですね。
こういうキャラの乗っているバイクに愛着を感じたりするのも、自転車漫画の良いところです。


またキャラの魅力の他に、この漫画のセールスポイントは「熱い」ところです。
【友情・努力・勝利】というジャンプ三大原則を見事に満たしていると思います。(掲載誌はチャンピオンだけど)
特にゴール前スプリントなどの場面では、渡辺先生の荒々しく迫力のある絵が場面を盛り上げてくれます。
1年目IH3日目の、小野田VS真波は鬼気迫る素晴らしい絵でした。(アニメだとそこまで表現されてなくて残念だった記憶)
と……この文章を書いていて思ったのですが、弱虫ペダルのメイン3校って、それぞれジャンプ三大原則に準じている気がします。
6枚のジャージで戦うことに拘り思いを繋ぐ戦い方の総北高校――友情
王者であることの誇りを胸に絶え間ない鍛錬を積み重ねる箱根学園――努力
何よりも勝利のみを求めて限界まで削ぎ落す京都伏見――勝利

って感じで。
まぁ意識しているわけじゃないんでしょうけど、3校のそれぞれの特色が出ていて面白いと思いました。


今や数々のメディアミックスを果たし、ロードバイクの魅力を幅広い客層に届けた「弱虫ペダル」。
「キャラの魅力」「王道な熱さ」を持った良い少年漫画だと思います。